「お酒を飲むと、せっかく鍛えた筋肉が分解されるの?」
「今日は飲み会。筋トレを先に済ませて、プロテインを飲めば大丈夫?」
筋トレを続けていると、お酒の予定が入った日の過ごし方に迷いますよね。ここでは、筋肉への研究結果と、その日の運動・食事の決め方を分けて考えます。
運動後の多量飲酒で、筋タンパク質を作る反応が抑えられた研究はあります。ただし、「飲んだ分だけ筋肉がすぐ減る」と示した研究ではありません。
筋トレと飲酒が重なる日は、まず飲まないで参加する選択も含めて予定を決めましょう。食事やプロテインを先に取ることを、飲酒の影響を消す方法にはしないのが大切です。
なお、飲酒を減らすと手が震える・汗が出るなどの症状がある方は、急にやめる前に医療相談を優先してください。詳しい注意点は後半で説明します。
先に決めたいこと
- 飲まない・アルコール0.00%の飲み物に替える選択を、最初から用意する
- 飲む場合は、度数と量を確認し、飲み会の後に運動を入れない
- 翌日に不調があれば休む。食事抜きや追加の筋トレで埋め合わせない
この記事で分かること
- 筋タンパク合成の低下と、筋肉の分解・減少の違い
- 研究で飲んだ量と、その結果を当てはめられる範囲
- 飲酒予定がある日の筋トレと、翌日の再開判断
- 純アルコール量の計算と、ノンアル・微アルの見方
- 食事・水分・プロテインでできることと、できないこと
- 飲酒を避ける条件と、医療相談を優先する症状
この記事を書いた人
田中圭介
NSCA-CPT(米国発のNSCA認定パーソナルトレーナー資格)保有 / スポーツクラブで約4年間トレーナーとして活動 / パーソナルトレーナーとしても活動 / SNS『Lemon8』フィットネス部門・厳選クリエイター選出
学生時代に神奈川県内の大手スポーツクラブで約4年間、ジムトレーナー / パーソナルトレーナーとして活動。
現在は、筋トレ初心者・ダイエット初心者向けに、無理なく続けられる体づくりを発信しています。
アルコールで筋肉は分解される?研究で分かっていること

筋肉のたんぱく質は、作られる過程と分解される過程があります。筋タンパク合成が低かったという結果だけでは、筋肉の分解量や、長期の筋肉量がどれだけ変わったかまでは分かりません。
よく引用される研究は「8人・多量飲酒・運動後数時間」の試験
Parrらの2014年の試験では、運動習慣のある男性8人が、レッグエクステンションと持続的・高強度の自転車運動を組み合わせた運動を行いました。別々の日に条件を変える比較です。
| 確認した条件 | 試験の内容 |
|---|---|
| アルコール量 | 体重1kg当たり1.5g。体重70kgなら純アルコール105gという多い量 |
| 飲酒の時間 | 運動終了1時間後から、3時間かけて摂取 |
| 比較する食事条件 | ホエイたんぱく質25gを運動直後と4時間後に取る条件と、同じたんぱく質にアルコールを加える条件など |
| 測ったもの | 運動後2〜8時間の筋原線維たんぱく質の合成速度 |
アルコールとたんぱく質を取った条件では、アルコールなしで同量のたんぱく質を取った条件より、合成速度が24%低い結果でした。これは筋肉量が24%減ったという意味ではありません。
この試験は筋たんぱく質の分解速度を直接測っておらず、何週間・何か月後の筋肥大も調べていません。女性、高齢者、少量の飲酒、別の運動内容に同じ数値をそのまま当てはめることはできません。
参考:Parrら(2014):運動後のアルコール摂取と筋タンパク合成
「少量なら無害」「何時間空ければ安心」とも決められない
この結果から一度の飲み会で筋トレが全部無駄になるとは言えません。一方、試験より少ない量なら影響がない、と保証する根拠にもなりません。筋肉の話だけで、お酒全体の健康リスクを判断しないようにしましょう。
飲酒の影響は体質や体調などでも異なります。厚生労働省のガイドラインでも、少量の飲酒でリスクが上がる病気があることや、示された量が個人の許容量ではないことに注意を促しています。
飲酒の予定がある日は筋トレをどうする?

飲み会があるからといって、無理にトレーニングを詰め込む必要はありません。先に「飲まないで参加するか」「飲む予定を変えるか」「筋トレを別日にするか」を決めると、後から帳尻を合わせようとせずに済みます。
| 今の状況 | その日の選び方 |
|---|---|
| 飲まないで参加できる | 飲酒のために予定を変える必要はありません。普段どおり、体調に合う運動と食事を考える |
| トレーニング後に飲む予定がある | 飲まない・量や予定を見直す選択を優先。難しければ、強度の高い運動を別日に移すことも検討する |
| すでに飲んでいる・酔いが残っている | 筋トレやランニングは見送る。「少しなら」「軽い運動なら」と試さない |
| 翌日も頭痛・吐き気・ふらつきなどがある | トレーニングより休養を優先。症状が続く・強い場合は医療相談へ |
午前中に鍛えれば、夜の飲酒の影響がなくなるわけではない
トレーニングを早い時間に移すことは予定の調整にはなりますが、回復への影響をなくす方法としては勧められません。上の試験から「運動後○時間空ければ安全」という境目も決められません。
飲酒で眠りが浅くなり、睡眠リズムが乱れることがあります。寝つきや睡眠の悩みを、お酒で解決しようとしないでください。
参考:厚生労働省の飲酒ガイドライン:不安や不眠を解消するための飲酒
また、飲酒するから先にいつもより多く鍛える、翌日に休んだ分をまとめて行う、といった埋め合わせは不要です。予定を変えた日は、次の通常のトレーニングへつなげると考えましょう。
厚生労働省は、飲酒中・飲酒後の運動や入浴など、体に負担をかける行動を避けるよう示しています。飲酒後に汗をかいて「お酒を抜く」ための運動やサウナは行わないでください。
飲酒量は「純アルコールg」で確認する

同じ1杯・1缶でも、大きさや度数でアルコールの量は変わります。「ビールよりハイボールなら筋肉に優しい」と、酒の名前だけで選ばないことが大切です。
純アルコール量の計算
飲んだ量(ml)× 度数 ÷ 100 × 0.8
容器に純アルコール量の表示があれば、まずその表示を確認します。下表は計算例であり、飲んでよい量の一覧ではありません。
| 表示の例 | 飲料の量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール・5% | 500ml | 20g |
| ハイボール・7% | 350ml | 19.6g |
| ワイン・12% | 150ml | 14.4g |
| 日本酒・15% | 180ml | 21.6g |
種類を変えて飲んでも、純アルコール量は合計します。例えば表のビール1缶とハイボール1缶なら、合計は39.6gです。これは足し算の例で、推奨量ではありません。
筋肉が多いから、運動したから、お酒に強いと感じるからという理由で、飲む量を増やさないようにしましょう。量を決める場合も「ここまでは安心」と考えず、少なくする・飲まない選択を含めます。
飲み会の食事と水分は、普段の食事を崩さないために

飲む予定に合わせて昼食を抜いたり、翌日ほとんど食べなかったりするより、普段の食事の流れをできるだけ保ちましょう。飲酒前や飲酒中に食事を取ること、水や炭酸水などを間に挟むことは、公的なガイドラインでも示されています。
主食・主菜・副菜を組み合わせて考える
例えば、ご飯に魚や鶏肉、豆腐・卵などの主菜と野菜を組み合わせる形です。外食でも、刺身や焼き鳥、冷奴など一品だけで済ませるのではなく、その日にまだ食べていないものを補う視点で選べます。
揚げ物や締めの一品を一度食べたら台無し、という考え方も不要です。追加する前に空腹具合と、その日食べた量を見直しましょう。食事そのものは、飲酒を続けるための対策ではありません。
水を飲んでも、アルコールの量は帳消しにならない
水やアルコールを含まない飲み物を選ぶ時間を作り、飲酒量が増え続けないようにします。水を追加しても、すでに飲んだ純アルコールの量が減るわけではありません。飲酒後の回復時間を短くする保証としても使わないでください。
普段の献立づくりは筋肉をつけるための食事の組み立て方、飲酒とは別の運動中の補給は筋トレ中の水分補給で詳しく扱っています。
プロテインでお酒の影響を帳消しにはできない

プロテインは、普段の食事でたんぱく質を取りにくいときの補助として考えます。飲酒前に飲んだり、翌朝に増量したりして、アルコールの影響を消すためのものではありません。
先ほどの試験でも、同じ量のホエイたんぱく質を取っていても、多量のアルコールを加えた条件では合成速度が低くなりました。「プロテインさえ飲めば大丈夫」とは考えないでください。
食事が取れるなら、魚・肉・卵・大豆製品などを含む普段の食事へ戻すところからで十分です。プロテインを使う場合も、飲酒量に応じて増やすのではなく、食事で不足する分と製品表示を確認します。吐き気があるのに無理に飲んだり、食事をすべて置き換えたりしないようにしましょう。
普段のたんぱく質補給を検討するときに
食事で取りにくい場合の選択肢です。飲酒の影響や二日酔いへの対策として購入する必要はありません。
味・成分・アレルゲン・価格は商品表示で確認してください。
ノンアル・微アル・糖質ゼロは表示を分けて見る

飲まないで参加したいときは、水・炭酸水・お茶や、アルコール分0.00%と表示された飲み物を選ぶ方法があります。普段飲まない人が、筋トレのために飲酒を始める必要はありません。
| 表示・呼び方 | 確認したいこと |
|---|---|
| アルコール0.00% | アルコールを取らない選択をするときは、この表示を確認する |
| 微アル | 少量でもアルコールを含む。飲まない選択とは分ける |
| 糖質ゼロ・糖類ゼロ | アルコールゼロとは別の表示。度数・量・エネルギーをそれぞれ確認する |
「ノンアルっぽい名前だから」「糖質が少ないから」だけで判断せず、容器の表示を見る習慣をつけましょう。アルコール分と糖質・エネルギーを別々に見ると整理しやすくなります。
飲酒後・翌日の不調は、運動で取り戻そうとしない

酔い、ふらつき、吐き気、頭痛、強い眠気などがある間は、筋トレを見送ります。「少し動けば戻る」と試さず、運動をしない予定へ切り替えてください。
再開は、飲酒の影響が残っておらず、食事や睡眠が取れ、普段の体調に戻ってから考えます。酔った感じがしないことだけで判断せず、迷う場合は休みましょう。再開していつもと違う症状が出た場合も、その日は中止します。
一度休んだ分を、セット数の倍増や食事制限で取り返す必要はありません。次の通常の予定に戻し、不調が続く・繰り返すときは医療機関へ相談してください。
筋トレより、飲酒を避ける判断・医療相談が先になる場合
- 20歳未満、妊娠中・授乳中、体質的にお酒を受け付けない場合は飲酒を避ける
- 療養中・服薬中は、飲酒してよいかを主治医に確認する
- 減酒で手の震え・発汗・強い不安などが出る、飲む量を抑えられない場合は医療相談を。依存がある場合、急な断酒は危険なことがあるため自己流で進めない
呼びかけても反応しない、意識を保てない、呼吸がおかしい、けいれんがある場合は、寝かせて様子見をせず119番で救急を呼んでください。
アルコールと筋トレのよくある質問

少し飲んだだけでも、筋肉は落ちますか?
今回確認した多量飲酒の急性試験から、少量を一度飲んだ後の筋肉量の変化は判断できません。筋タンパク合成の低下を、そのまま筋肉量の減少率に読み替えないことが大切です。少量なら無害という保証でもありません。
筋トレ後、何時間空ければ飲んでもいいですか?
全員に使える安全な待ち時間は示せません。朝に筋トレを済ませれば夜は影響がない、とも言えないため、飲まない選択や、飲酒・運動の予定そのものを見直します。
筋トレをしない日なら飲んでも大丈夫ですか?
休養日は、筋トレと飲酒が同じ時間帯になることを避けるための調整には使えますが、飲酒の健康リスクがなくなる日ではありません。睡眠や翌日の予定も含めて、量を減らす・飲まない選択を考えましょう。
ビールよりハイボールなら筋肉にいいですか?
酒の名前だけで筋肉への優劣は決められません。度数と飲んだ量から純アルコール量を確認します。糖質が少ない飲み物でも、アルコールを多く取れば別の話です。
プロテインを多めに取れば、飲み会の影響を減らせますか?
増量で埋め合わせる方法は勧められません。食事で取りにくいたんぱく質の補助と、飲酒への対処は分けます。追加購入より先に、飲まない選択、飲酒量、食事や休養の予定を見直しましょう。
まとめ|飲まない選択と、予定・量・体調の確認から始めよう

運動後の多量飲酒で筋タンパク合成が抑えられた研究はありますが、そこから全員の筋肉の減り方や安全な飲酒量までは決められません。
- まず、飲まない・アルコール0.00%に替える選択を用意する
- 飲む場合は、酒の種類ではなく度数と量を確認する
- 食事・水分・プロテインを、飲酒の影響を帳消しにする方法にしない
- 飲酒中・飲酒後や、翌日に不調が残るときは運動を見送る
- 休んだ分をまとめて鍛えず、体調に合わせて普段の予定に戻す
一度の飲み会を「全部台無し」と決めつけるより、次の予定を落ち着いて整えましょう。無理に飲む必要も、無理に鍛えて埋め合わせる必要もありません。
普段の食事づくりを整えたい人へ
まずは毎日の食事から考え、たんぱく質を取りにくい場面だけ補助食品を検討します。飲酒への対策を目的にプロテインを増量・購入する必要はありません。
味・成分・アレルゲン・価格は商品表示で確認してください。
